この家は米子市の中心市街地の大通りに面した商店街の一画で準防火地域内に建ちます。
ご夫婦+子供(1人)+お父様の4人暮らしのご家族からご相談を受けた既存の住宅の建替えです。
老朽化に伴い色々不便なところを解消したい、家が寒くて暗く何とかしたいなどが最初のご要望でした。既存の住宅を見せていただいた時、当然の事ながら古さはありましたが家も庭も和風のしつらえが施してありおもむきを感じました。
大通りに面した敷地は東西に間口は広いのですが、南北に対しては奥行きが浅く東の狭いほうでは約2mしかありませんでした。
南側はお寺の墓地に隣接しており将来においても日蔭になるような高層の建物は建たないことが予想されました。
また、西側は貸店舗とくっついていて、それとは切り離して単独の敷地として一定の距離を空け、残された部分を利用しての計画となりました。
更にそれまで別の場所に駐車場がありましたが、敷地内に2台分の駐車場と自転車置き場を確保することが条件でした。
そしてお父様からは街並みの景観に合うような和風の外観を意識するようにとの要望をいただきました。
ですが、街路樹は大きなプラタナスの木が一定間隔で植えられており純和風では不釣合いな感じがしました。
その点を考慮し、外観としては屋根にいぶし瓦を使い外壁には左官壁の上にしっくい風塗装及び板壁、木の格子、アルミパイプすだれを交互にパターン化し印象深い現代風町屋のファサードになったのではないかと思います。
内部はどの部屋も一定以上の明るさと通風を考えました。
敷地の奥行きは少ないですが、間口中央あたりの建物をえぐるかたちで中庭を設け、1階客室、LDKのそれぞれを囲む配置となっています。
2階は個室を3部屋とりましたが、その中間にちょっとしたリビングを設け寝る前のくつろぎの間となっています。
北側の大通りの賑やかさとは正反対に南側はお寺に面していることもあり、明るい中にも静けさが感じられる家になっているのではないかと思います。
【撮影】野津研一
【建築家】宇佐美淳
(島根)